一週間ほど前から参議院議員選挙の期日前投票がはじまりました。

僕は選挙カーの演説が大嫌いなので、あの耳障りな大声を聞くたびに
選挙を嫌いになります。

それは単純にうるさいからという理由もあるのですが、それ以上に
内容の薄さにウンザリしている、というのが正直なところです。

「みなさんが日本に生まれてよかったと思えるような政治を・・・」

「子供たちが希望を持って生きていけるような日本を・・・」

「消費者を苦しめる消費税の増税は・・・」

などなど、どれも一般論に終始していて、ほとんど聞くに値しない
意見ばかり。

それだけならまだしも、選挙カーで言っていることは大体どこか
矛盾していたり、許容できないほど論理的飛躍が大きかったりします。

前回の衆議院議員選挙のとき、うちの選挙区ではある現役の医者が
立候補していたのですが、彼は選挙カーでこう言っていました。

「私は現役の医者だから、現場の気持ちが分かる」

「現場の気持ちが分かるから、政治に民意を反映させられる」

「だから私を応援してください」

ザックリまとめると大体こんな感じです。

現役である以上、現場で活動したことのない人に比べれば、
現場に対する理解があるのは確かだと思いますが、彼が現場の声を
代表できるぐらい(誰よりも)現場の気持ちを理解しているとは
かぎりません。

現役の医者の中では彼が一番現場を理解していない可能性だってある
ワケです。

その意味で「現役の医者だから」の「だから」はウソではないですが、
論理的飛躍が大きく、厳密さに欠けています。

加えて、彼はやたらと医者であることをアピールして、その肩書きを
武器に票を集めようとしていました。

ぶっちゃけ、この時点で彼に政治家になる資格はありません。

論理的飛躍に関しては、伝えられる内容や時間にかぎりがあるので、
ある程度は仕方ないですが、肩書きを武器にするのは政治家以前に
人として間違っています。

肩書きを武器にするということは、それをかざすことによって
有権者に票を入れてもらえるだろうと見込んでいるということです。

これが何を意味するか分かるでしょうか?

彼は有権者のことを、肩書きにつられて票を入れてしまうぐらい
バカだと思っているから、こういうことが平気でできるのです。

しかも、恐らく彼は自分が有権者をバカにしているということに
気付いていません。

肩書きを武器にすることが、有権者をバカにすることだと自覚できて
いたなら、それをやめるぐらいの正義感は彼にだってあるはずです。

手間や時間のかかることだと分かっていながら、日本をよくするために
自分から政治家という職に就こうとしているワケですから、それぐらいの
気持ちはあって然るべきでしょう。

ただ、その気持ちが空回りしている、ということです。

有権者は自分が候補者にバカにされていることに気付いていない。

候補者は自分が有権者をバカにしていることに気付いていない。

つまり候補者も有権者も、どっちもどっち、なのです。

しかし、選挙の責任はいつも、選ばれる側ではなく選ぶ側にあります。

 

凡人は自分の利益のことしか考えません。

自分の生活はどうなるのか、自分の給料はどうなるのか。

彼が政治のことに対して関心を持つのは、そういうことだけです。

そんな人間の票を獲得するために候補者は演説をするワケですから、
当然その内容は

「私はあなたのために給料を増やします」

「私はあなたのために税金を減らします」

「私はあたなのために託児所を増やします」

「私はあなたのために養育費を補助します」

というようなことになります。

ただ、さすがにこれだけを言ったのでは説得力がありません。

だから彼らは「私はあなたのために給料を増やします」と言うための
理屈を無理やりこじつける。

これによって論理的な飛躍が生まれるワケです。

それが実現可能かどうかは、実際にやってみるまでは分かりません。

表面的にはこじつけに見えても、やってみたら案外上手くいった、
みたいなこともあるかもしれません。

しかし、われわれはそれ以前に「それは実現すべきことなのか?」
ということを考えなければならないと思うのです。

確かに給料が増えること自体は誰にとっても有り難いことでしょう。

そうなれば多少今の景気が上向くこともあり得ると思います。

けれども、もしそれが20年後や30年後の未来から前借しているだけ
だったとしたらどうでしょうか?

それでも心から喜べるでしょうか?

今のアベノミクスがやっているのは、そういうことです。

もちろん、それが必ずしも悪いワケではありません。

個人的にはいろんな意味で賛成しかねますが、アベノミクスは未来から
前借した分を今に投資することで、未来に利息をつけて全額返済しようと
考えています。

一時的に未来からお金を借りて、今の景気を回復させることができれば、
借りた以上の利益を未来に返すことができるかもしれない。

その可能性に賭けているということです。

しかし、その賭け金は未来から「無断で」借りてきているものです。

当たり前ですが、まだ生まれていない未来の子供たちは、今の政治家に
対して「貸したくない」と抵抗することができません。

そういう無抵抗な人からお金を借りることによって、善くも悪くも
アベノミクスは成り立っているということです。

ギャンブル同様、これが上手くいけば何も問題はありません。

万馬券を当てられればサラ金から借りた借金も返せて、自分もある程度
普通の暮らしができる。

素晴らしいことだと思います。

けど、もし失敗したら?

一番の被害者はわれわれではなく、何も知らない、何の罪もない
未来の世代です。

勝手に自分たちのお金を持ち出されて、勝手に失敗されるワケですから、
たまったもんじゃないですよね。

それでいて、失敗したわれわれには、彼らに対して責任を負う方法が
何もないのです。

一体どれだけの人が、これを知って選挙に臨んでいるでしょうか?

アベノミクスは本当に推進すべきものなのでしょうか?

それを考えた上で選挙に臨めば、まったく意識が違ってくると
思います。

 

ここでアベノミクスのリスクを強調したのは、世間的にこのことが
あまり知られていないからです。

この記事に自民党の印象を悪くしてやろうという意図はありません。

また以前の記事で僕は「アベノミクスは失敗する」と言いましたが、
だからと言って別の政党の政策が成功するとは限りません。

というか、もうアベノミクスは始動してしまっているワケですから、
むしろ途中で止めることは結果をより悪くする可能性があります。

僕が言いたいのは、そういういろんな可能性を考えて投票に行って
欲しいということです。

僕の意見はあくまでも参考意見として捉えてください。

真実は1つではありません。

同じ事実に対して、論理的に正反対の推論を行うことは可能であり、
それは実はそこまで難しいことではないのです。

僕の意見がもっともらしく見えたとすれば、それは僕が僕の都合に
合う事実を並べているからです。

アベノミクスの悪い側面ばかりを強調して論理を組み立てれば、
その政策を悪そうに見せることはできますし、逆も然りです。

1つの事実には必ず2つ以上の側面があります。

そのうちのどの面を選ぶかによって、真実は何個でも作り出すことが
できるのです。

僕の意見を鵜呑みにしてはいけません。

あなたの頭で考え、判断し、選ぶのです。

それが民主主義のあるべき姿です。

 

また別の側面から選挙を考えてみましょう。

日本をはじめ、多くの国は国会で二院制(両院制)を採用しています。

ご存知の通り、日本には衆議院と参議院があり、この2つの院は本来、
安全を期して同じ議題について「2度」考えるためにあります。

衆議院ではあっさり通ったけれども、参議院で再度吟味してみたら
やっぱりそれはやるべきではないという意見が多かった。

そうやって国会の暴走や浅はかな判断を回避するために、
二院制という制度はあるワケです。

しかし現在は、実質的には衆議院であれ参議院であれ、政党ごとに
賛否が統一されているため、ほとんど一院制と同じ状態になって
います。

衆議院でも参議院でも、自民党として賛成なら、自民党の議員は
みんな(2度考えるまでもなく)賛成するということです。

そのため仮に衆参両議院で与党が過半数以上の議席を占めた場合、
衆議院を通った案が参議院で否決されることは、まずありません。

それは体裁としては2度考えた結果として2度とも賛成が過半数を
占めたからということになるワケですが、本当に2度考えているか
どうかはかなり怪しいと言えます。

むしろ政党内で賛否を統一している以上、党内で意見を統一する
ための「1度」しか考えていないと考えるのが妥当でしょう。

そしてこれは、ねじれ国会になったとしても同じです。

ねじれ国会とは、与党が衆議院の過半数を獲得している一方で、
野党が参議院の過半数を獲得している状態を言います。

例えば、現在の与党は衆議院では過半数を占めていますが、
今回の参議院選挙で過半数の議席を獲得できなければ、
国会はねじれ国会になるということです。

たしかにねじれ国会になれば、野党が与党案に反対することによって、
法案成立までの期間を延ばしたり、廃案に追い込むことはできます。

場合によっては、与党の案を妥協案に変更させることも可能でしょう。

しかし、これは単に与野党の利害がせめぎ合っているだけであって、
提示された1つの案が吟味されている(2度考えられている)
ワケではありません。

もう少し分かりやすくいうと、ねじれ国会は

衆議院(与党) VS 参議院(野党)

という構図を作るだけで、衆議院と参議院が共に国のために吟味を
重ねることとは何も関係ないということです。

つまり、国会をねじれ国会にすべきか否かは、与党が提出した
決議案をより妥協的にすべきか否か、という判断でしかないのです。

 

今回の参議院選挙で野党が過半数を占めた場合、国会はねじれるので、
恐らく与党案はより妥協的になり、政策のスピードは落ちることに
なります。

アベノミクスがやろうとしているような規制緩和を行うためには、
変更しなければならない法律がたくさんありますから、それが妥協的に
なったり速度が落ちたりすれば当然、政策の効果が出るのも遅くなり、
場合によっては効果そのものが減っていくことにもなるでしょう。

しかしその一方で、アベノミクスが暴走して悪い方向に働く場合には、
ねじれ国会によってそれを抑制し、方向を改善する余地が残される
ワケです。

このどちらを重視するかで、与野党のどちらに投票するかが
変わってきます。

どれだけ与党を応援していようとも、与党が暴走したときにまで
応援しようと思うかどうかは分かりません。

アベノミクスには賛成だけど、ブレーキが必要だと思う場合には、
今回の選挙では野党に投票することが正しい選択になるかもしれない
ということです。

ただし、それが「良く効く」ブレーキなのかは分かりません。

ブレーキには違いありませんが、ブレーキがあると思って
安心していたら、坂道で急にブレーキが効かなくなることだって
あり得るワケです。

この場合はむしろ、ブレーキがあるという安心感が逆の効果を
生んでしまっています。

さらに言えば、ブレーキが効きすぎて国の運営が停滞してしまう
ということもあり得ます。

われわれはアクセルだけではなく、ブレーキすらも見極めなければ
ならないということです。

 

こう考えていくと、与党か野党かという2つの選択肢であっても
かなり悩むと思います。

現実には政党と候補者を合わせて何百通り、何千通りもの選択肢が
あるワケですから、頭がパンクして「無難に自民党にしておこう」
という思考になってしまうのも分からないではありません。

「混乱した脳はつねにNOと言う」

これはもうお決まりですから。

実際、前の衆議院選挙は、有権者のそういう保守的な選択によって
自民党が勝利したワケです。

凡人は「最善の選択をすること」ではなく

「最悪の選択を避けること」

を考えます。

これは成功の原理と同じで、成功者が成功を求めて行動するのに対して、
凡人は失敗を避けることを優先して行動する傾向にあるということです。

こういう人が有権者の大多数を占めている限り、日本は最低の国には
なりませんが、最高の国にもなりません。

何十年も「抜本的な改革を・・・」と言いつつ、ずっとぬる~い政治が
続いているのは、そのためです。

抜本的な選挙が行われずして、有権者が、候補者が、政党が抜本的に
ならずして、抜本的な改革なんてできるはずがないのです。

もちろんだからといって、日の当らないような野党に投票することが
正しいと言いたいのではありません。

そういう「奇をてらった」投票は、むしろリスクを増すだけです。

ここで言いたいのは

 

「何事も態度が大事だ」

 

ということです。

自民党を選ぶにしても、保守的に選ぶのか、積極的に選ぶのかでは
政治家の働きは違ってきます。

よく考えてみてください。

あなたが運動会の100メートル走に出るとして、「お前しか出られる
ヤツがいないから取りあえず出てね」と言われるのと、「ぜひとも
あなたに走ってほしい」と言われるのとでは、同じ100メートル走に
出るのでも全然やる気が変わってくるでしょ?

政治家だって人間なんだから、保守的に仕方なく選ばれるよりも
積極的に期待されて「あなたしかいない!」と言って選ばれる方が、
やる気が出るに決まってるじゃないですか。

プレッシャーだって、期待されている方が大きくのしかかります。

そういう何気ないことで、政治は変わるのです。

だからこそ、われわれは保守的にではなく、どれだけ悩んででも
積極的に応援できる人や党を選ぶべきであり、そういう人や党が
探しても見つからないならば、積極的に白紙投票すべきなのです。

これが僕の言う「抜本的な選挙」です。

 

人間らしく選挙に向き合ってください。

人間らしく政治に向き合ってください。

すべては人間のやっていることです。

本気で思えば、本気で向き合えば、必ず気持ちは伝わります。

それがたった一枚の薄い紙切れだったとしても。

人間とは、そういう不思議な生き物のことを言うのです。

ありがとうございました。

 

※この記事はメルマガ『脱凡人のすすめ中級』からの転載です。

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