ども、ペスです。

久々に滋賀県立近代美術館に足を運んでみました。

県展というのはその県内在住者から作品を公募し、応募してきた中から
入選作品を選び、それらを展示公開する展覧会です。

素人からプロまでと言うと少し聞こえが悪いですが、特定の条件を満たしていれば
誰でも応募することができます。

絵画教室の生徒であろうが、団体展所属者であろうが、自己流で作品を
作っている人であろうが、実力さえあれば美術館に作品を展示してもらえ、
あわよくば賞金までもらえる。

もっと言えば、画廊の人や学芸員なんかもこういう展覧会を回っていたりしますから、
そういう人の目に留まって大きく飛躍できるチャンスもあるワケです。

鑑賞する側としては、思ってもみなかった素晴らしい作品(作家)に出会える
可能性があるという点で、企画展とは違う面白さがあります。

 

この展覧会を見てきた感想は

「思った通りピンキリだな」

という感じでしょうか。

いい作品もあれば、そうでない(と感じる)ものもある。

こんなことは当たり前のことなのですが、これが何気に重要だということを指摘している
人は少ないように思います。

通常、われわれが美術館で見る作品は主観的な評価は抜きにして「いい作品」
ばかりです。

常設展で展示されている作品はその美術館が買った、もしくは寄贈作品の中から
選ばれた作品ですから、プロの目が通っており、少なくとも素人が選ぶものよりかは
確かな作品が展示されています。

企画展も新聞社が企画を持ち込んでいるとは言え、ルーブル美術館展や
エルミタージュ美術館展のように、確かな美術館が持っている確かな作品を
展示する以上、それも「いい作品」に分類されると言えます。

このように、われわれは普段、誰かが選んだ「いい作品」にばかり触れているのです。

県展にしても、審査員がいる以上そういう面はあるのですが、県展の審査基準は
送られてきた作品群のレベルに依存しますから、その年度によって、送られてくる
作品によって、展示される作品の質が決まります。

しかも、入選作品というのはかなりの数の作品を選ばなければなりません。

今回見に行った県展では、絵画だけでも228の応募作品のうち、123もの作品が
入選しています。

実に応募作品の半分以上が入選しているワケですが、ここまで競争率が低くなると、
上位の2,3作品はともかく、それ以下の作品の質が怪しくなるのは必然です。

賞を取った作品だけが展示されるのであれば、美術館の作品といい勝負をする
可能性もありますが、そう何十個も素晴らしい作品が送られてくるとは考えにくい。

つまり、県展(公募展)は良くも悪くも必然的にピンキリの展示になるのです。

 

で、ピンキリの何が重要なのか。

それは、優秀な作品がどれぐらい優秀なのかが分かる、「いい作品」と
そうでない作品をその場で見比べられるという点で重要です。

普通われわれが見る展覧会では、その世界で一定以上の評価を得た
「いい作品」ばかりが展示されます。

例えば印象派の展覧会をする場合、そこに展示されるのは印象派の中でも
優秀な(有名な)作家の「いい作品」だけで、特別そういう主旨の展覧会でなかぎり
二流の(もしくは無名の)作家に光が当たることはありません。

「無名の作家展」というのがあれば僕はぜひ見に行きたいですが、それはまた別の話。

要は通常の展覧会では、「いい作品」がどれぐらい優秀なのかを判断する材料がない
ということです。

もちろん今までたくさんの作品を見てきた人ならば、過去に見た作品と比較して
目の前の作品の良し悪しを判断することもできるでしょう。

それが審査員や学芸員や評論家や画廊のオーナーの仕事なのですから、
できて当然です。

けれども、誰もがそんな経験を積んでいるワケではありません。

僕だって美術を学びはじめて3年も経ってませんから、まだまだ経験は浅い。

そういう人にとって県展というのはピンキリの作品をその場で見比べられる
という意味で魅力的な場所のように思います。

たくさんある作品を見比べながら、なぜあの作品に賞が与えられたのかを
じっくり考えることができる。

何が「いい作品で」、何がそうでないのかを客観的に見られる。

これほど初心者(訓練)向きの展覧会もないのではないでしょうか。

 

僕もようやく分かってきたのですが、最初の第一歩としては、自分なりの基準が
持てると美術を見るのが楽しくなってきます。

この作品は素晴らしい。

この作品はイマイチ。

そうやって評価を分ける基準が自分の中にあると、「色々見たな―」という満足感が
得られます。

これが万人に当てはまる保証はありませんが、少なくとも僕の実感としては
そうなので、参考にしてみて下さい。

ちなみに、自分の中に基準を作るのはそんなに難しいことではありません。

1.一流・二流、有名・無名を問わず、とにかく数を見ること。
2.作品を見る際に今まで見た作品と(なんとなく)比べてみること。

この2つを繰り返していれば勝手に基準はできます。

金銭的な事情でそんなに展覧会を回れないのなら、いろんな画廊に通えばいいと
思います。

時間がないならネットでいろんな作家の作品を眺めるだけでもいいでしょう
(可能な限り実物を見るべきだと思いますが)。

今はグーグルミュージアムなんてのもありますから、ある程度は補えるはずです。

そんなことをしているうちに勝手に基準はできますから、あんまり焦らずに気ままに
やってみて下さいませ。

 

追伸:

「いい作品」とは、ある程度客観的に評価できる作品を指します。

本来であれば、ものの良し悪しは一人一人の価値観に依存しますから、
美術館に収蔵された作品を絶対視することはよくありません。

特に現代美術のような、まだ評価の定まっていない作品については、
必ずしも学芸員の目が正しいとは言えませんので、余計に注意して下さい。

何事も自分の責任において自分の判断基準で選び考えることが大事なのです。