先日、安倍総理が

「努力が報われる社会にするためにデフレを脱却し、景気を回復する」

という発言をしていました。

この発言は実は的外れなことを言っているのですが、あなたは何がどう
的を外しているか分かりますか?

 

こんなクイズを先日まぐまぐで配信しているメルマガで出題したの
ですが、あなたは答えが分かるでしょうか?

もしこの答えが分からなかったとしたら、あなたはこれから日本が
近い将来どうなるのかをまったく予測できないということです。

それがいかに危険なことであるかは言うまでもありません。

安倍総理のこの発言は、

「われわれ政府は今後、日本をこういう風に変えていきます」

と言っているワケですが、それは「絶対に」実現できません。

「絶対に」というのがポイントで、そもそもこの発言は、
まったく相反する性質のものを同時に実現すると言っているのです。

例えるなら「大きな小皿を作ります」みたいな。

それが実現不可能なことぐらいは、少し考えれば誰でも分かります。

そんなことを日本の総理大臣が堂々と成長戦略として宣言しているわけ
ですから、近い将来、日本がどうなるのかぐらいは分かりますよね?

今のうちにそれを知っておけば対策を立てることも可能ですが、
気付かなければ・・・。

そんなワケなので、せめて安倍総理が何を言っているのかぐらいは
この記事を読んで知っておいてください。

そのあとに対策を立てるかどうかはご自由にどうぞ。

それでは解説に入っていきます。

 

このクイズを考える上で最も重要なのは、安倍総理の使った言葉の
意味です。

特に「努力が報われる社会」という言葉と「景気を回復する」という
言葉がキーになります。

まず前者から見ていきますが、「努力が報われる社会」というのは
1月11日の記者会見では

「額に汗流して頑張って働けば必ず報われる真っ当な社会」

という言葉で表現されています。

もう少し続けると

「額に汗流して頑張って働けば必ず報われる真っ当な社会を
取り戻していくためにも、長引くデフレと円高からの脱却が決定的に
重要であります」

と言っているのですが、この発言から、総理は恐らく“かつて”の
古き良き時代を取り戻そうとしているのではないか、ということが
推測できます。

今時「額に汗流して」という労働者のイメージは明らかに古臭いし、
なにより「取り戻す」という言葉からは回帰を望んでいることが
うかがえます。

それに加えて「真っ当な社会を取り戻す」と言っているところから、
総理は“かつて”の古き良き時代は真っ当だったけども、今の時代は
狂っていると考えているのではないか、ということも推測できます。

そうでなければ「真っ当な社会」や「取り戻す」なんて言葉は
使わないはずです。

特に「取り戻す」というのは、以前あった何かを取り戻す、
という風にしか使われない言葉ですから、総理の頭の中に過去が
想定されていることは間違ありません。

つまり、総理が言う「努力が報われる社会」とは、高度成長期や
平成バブルのことで、その時代の社会を総理は「真っ当な社会」と
考えているのではないか、ということです。

 

さらに話を深めていきます。

「額に汗流して」という言葉からも分かるように、安倍総理は努力を
こういうイメージで捉えています。

とにかく働いて、とにかく生産して、とにかく売る。

それが恐らく総理の言う「努力」なのでしょう。

高度成長期や平成バブルの時期というのは、良くも悪くも作れば
作っただけ物が売れた時代です。

高度成長期はまだまだ物そのものが少なかったから、誰もが物を
欲しがったし、平成バブルの時期はお金が余っていたから、
誰もが物を欲しがりました。

どちらも物の需要自体は同じなので、作れば作るほど物は売れて
いったワケです。

そう考えると当時最も報われた「努力」はさっきも言ったように、
とにかく働いて、とにかく生産して、とにかく売る、ということに
なります。

働けば働くほど、生産すれば生産するほど、売れば売るほど、
その分だけ収入が増えたワケですから、その「努力」は
報われていたと言わざるを得ません。

だとすると。

安倍総理はこういう社会を「取り戻す」ことを考えているのでは
ないでしょうか。

これを「真っ当な社会」と考えているのではないでしょうか。

 

この時点で既に安倍総理がどれだけ的を外しているかは分かると
思います。

総理が目指しているのは「次」ではなく「前」の社会であり、
その社会を彼は「取り戻せる」と思っているのです。

しかし冷静に考えれば、それがどれだけおかしなことかは誰でも
分かるはずです。

高度成長期や平成バブルのような景気は取り戻せたとしても、
当時の価値観まで取り戻すことはできません。

今まで売れていなかったものが、景気が良くなっただけで売れる
ワケではないということです(詳しくは後述)。

また努力の定義もとっくの昔に変わっています。

かつては「とにかく働いて・・・」でよかったかもしれませんが、
今は物が溢れている時代であり、インターネットによってほとんどの
需要が無料で満たされてしまっている時代なのですから、
「とにかく働いて・・・」が報われないのは当然です。

それは景気が回復しようがしまいが、そんなのは全然関係なくて、
そもそも努力そのものが多くの企業で明後日の方向を向いている
ということです。

ほとんどの企業は未だに「とにかく働いて・・・」を努力だと
思っています。

そしてあろうことか安倍総理は、景気を回復すればその時代遅れの
努力が報われると信じている。

みんなの給料が上がれば、平成バブルの時のように無駄なものを
買いまくるだろうと思っているワケです。

当たり前ですが、どれだけ金が余ってようと、誰もいらないものは
買いません。

ましてや、これだけ安い物が溢れ、無料の娯楽が増えた時代に、
無駄使いの余地はほとんど残されていません。

財布のひもが緩くなることはあるでしょうが、そうだとしても
そのお金は時代遅れの努力ではなく、ちゃんと時代に合った努力を
している一部の企業にだけ流れることになります。

実際、自分の周りを見てみて下さいよ。

うちの近くのイオン(ジャスコ)には、ライトオンとユニクロが
隣合って並んでいるのですが、みんなが足を運ぶのはユニクロです。

(※ライトオンはユニクロと同じ衣料品店です)

ライトオンは休日でもスカスカですが、ユニクロは平日でも
そこそこお客さんが入っています。

この状況で景気が回復して、みんなの給料が上がったとしたら
ライトオンにお客さんが大量に来るようになるでしょうか?

なるワケないですよね、そんなの。

結局お客さんが増えるのはユニクロだけですよ。

多少はライトオンの客も増えるでしょうが、そんなのはユニクロの
比ではありません。

つまり、このまま景気を回復させたところで、努力が報われない
どころか、二極化が加速して努力が“できない”時代になっていく
だけだということです。

 

まだまだ言いたいことはあります。

安倍総理の発言をさらに取り上げると

「委縮し続ける経済に決別をして、イノベーションや新しい事業が
次々と生み出されていくような、そして、それによって雇用と所得が
拡大をしていくという強い経済を目指してまいります」

ということを同じ記者会見で言っているのですが、これはまったく
逆です。

委縮し続ける経済と決別するからイノベーションや新しい事業が
次々と生み出されるのではなく、イノベーションや新しい事業が
次々と生み出されるから委縮し続ける経済と決別できるのです。

つけ加えて言うと、景気が回復すればするほど、イノベーションは
起こりにくくなります。

会社の給料が上がってきているのに、だれがそれを捨てて転職なんて
するのでしょうか。

夏休みが9月2日まで延びたのに、だれが8月31日に宿題をやろう
なんて思うのでしょうか。

この場合の転職や宿題がイノベーションです。

イノベーションというのは「このままじゃヤバイ」と思って必死に
なるから起こせるのであって、景気が回復していて、先行き安心な
のほほんとした社会でイノベーションなんて起こりません。

だって今までがそうだったじゃないですか。

景気が最高潮のバブルの時期にイノベーションが起こりまくってたら、
今頃日本はこんな不況にはなってなかったワケです。

そこを今の安倍内閣は分かっていない。

政府が余計なことをして、下手に景気を上向かせたりしたら、
それだけイノベーションの起こる時期が先送りになってしまうのです。

それで短期的には企業を救えても、長期的には絶望が待っています。

夏休みの宿題は、サボればサボるほど、それを片付けるときの絶望は
大きいのです。

 

第4回の経済財政諮問会議の議事要旨を読む限りでは、安倍総理
ふくめ安倍内閣の要人たちは、景気の後退によって企業の先行投資や
消費者の支出が委縮していることを懸念しているようです。

しかし、それは景気が悪いから委縮してるのではありません。

われわれがみんなリスクばかりを気にするようになっているから、
委縮しているのです。

行動経済学的に言えば、今のわれわれには支出や先行投資という
リスクをおかしてまで手に入れたいものがほとんどない、
ということです。

例えば、結婚や恋愛には「別れること」がつきものですね。

あ、べつに深い意味はありませんよ(笑)

あくまでも事実として言っているだけです。

くっついてしまった以上は、離れる可能性は必ず生まれます。

けれども、あなたは大好きな人と付き合ったり結婚したりする際に
別れるリスクや離婚のリスクなんて考えますか?

大好きな相手の家柄や年収なんて気にしますか?

普通は考えないですよね?

ってか、そんなのいちいち考えてたら「付き合ってください」とか
「結婚してください」なんて言えないですよね?

人間は、本当に好きなことや好きなものに対してはリスクなんて
一切考えません。

要するに、今の日本企業には「お金のことなんて後から考えろ!」
(大好きだから付き合ってください)という情熱がなく、消費者には
「お金なんてどうでもいい」(あなたの家柄なんて気にしないわ)と
思える対象がないということです。

 

その意味で、企業の先行投資が委縮しているのは、リスクを恐れて
いるからというよりも、遊び心を忘れてしまったからだと言えます。

彼らは「こんなことをすれば面白いんじゃないか」とか「これを
やってみたい」ということを考えられなくなってしまっているのです。

それは業績が悪いから考えられなくなっているのではなくて、
考えられなくなっているから業績が悪いのだということに彼らは
気付かなければなりません。

仮に今回のような政府の援助があったとしても、遊び心は生まれて
きません。

お金があればやりたいことが出来ると思っている人はかなり多いと
思いますが、実際にお金を手に入れてしまうと、やりたいことも
やらずに無難に貯金して細々と生きてしまう人がほとんどなのです。

今のアベノミクスは、まさにそんな感じです。

企業の体質がなにも変わってないのに、お金だけ与えても意味なんて
ないんです。

それは企業に無駄な「安心」を与えるだけで、チャレンジ精神や
情熱を煽るようなことには絶対にならない。

バブルの時期にあった先行投資は、単なる事業拡大であって、遊び心、
つまりイノベーションがあったワケではありません。

それは新しいことではなく、同じことをたくさんやっていただけ
なのです。

当時はそれでよかったのでしょうが、今はもう時代が違います。

そんな報われない努力を、明後日の方向を向いた努力を、助けたって
無駄に決まってるじゃないですか。

今変わらなきゃいけないのは、経済でも政治でも景気でもなく、

「われわれ人間」

です。

そしてわれわれ人間が変わるのは、ほぼ例外なく、危機的状況に
陥ったときです。

われわれ人間は「このままじゃヤバイ!」と思って、はじめて
変わろうとするのです。

その段階をすっ飛ばして、お金をばらまくなんて、なんの意味も
ありません。

どうしようもない人間にお金を渡しても、どうしようもない使い方しか
しないということです。

なぜ、こういう当たり前のことを誰も言わないんでしょうね。

僕にはそれが不思議でなりません。

 

そろそろまとめに入りましょう。

アベノミクスの悲劇は、景気が人を変えると思っている点につきます。

「景気が良くなり給料が上がれば、みんな安心して色々なことに
チャレンジするようになるだろう」

安倍内閣の要人たちはそう考えています。

しかし、ここまでで散々解説したように、それはまったく逆です。

景気が良くなって給料が上がったら、みんな安心してその環境に
甘んじてしまうのです。

景気が回復し、順調に売上が上がり続けている会社で、わざわざ
リスクをおかして斬新なアイデアを実行する必要があるでしょうか?

その状況では、多くの人はそのまま現状維持を考えるはずです。

だってリスクを冒さなくても、売上は順調に上がってるんだから。

つまり景気が回復すると、チャレンジ精神は大幅に下がって
イノベーションは起こり難くなるのです。

こんなことは現実を見れば誰でも分かります。

けれども、頭の中だけで考えると、景気が安定していた方がみんな
チャレンジしやすいだろうという考えになってしまうのです。

これは安倍総理や麻生大臣がバカだとか、そういう話ではなくて、
現場にいない人、中でも合理的思考に傾いている人は、こういう
考え方になってしまうということです。

だからこそ、われわれのような現場にいる人間がそれに気付いて、
ちゃんと指摘してあげなくてはいけない。

「それは違いますよ」って。

彼らは僕なんかより全然頭は良いワケですから、今みたいに例を
出して説明されれば、納得してくれるはずです。

もちろん、彼らに僕のような一個人の声を届けるのは容易では
ありませんが、この声が広がれば、彼らも耳を傾けざるを得なく
なると思います。

政治というのは、こうしてボトムアップ的に地道に変えていくしか
方法がないのです。

焦らずいきましょう。

そして、われわれだけは「現実」を見失わないようにしましょう。

それが安心して暮らせる社会を作るコツです。

ありがとうございました。

追伸1:参考資料。

この記事を書くにあたって、僕が参考にした資料のリンクを載せて
おきます。

安倍総理の記者会見

第4回経済財政諮問会議の議事要旨

 

※この記事はメルマガ『脱凡人のすすめ中級』からの転載です。

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